最高裁判所第二小法廷 昭和30年(オ)850号 判決 1957年7月05日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人久留島新司の上告理由について。
原判決が所論「証」記載の契約の趣旨を原判示のごとく和解条項に定められた代金債務の履行期のみに関するものと判断したことは何ら経験則に違反するものでなく、原判決に所論のような違法はない。又いわゆる信義誠実の原則は、ひろく債権法の領域に適用されるものであつて、ひとり権利の行使、義務の履行についてのみならず、当事者のした契約の趣旨を解釈するにもその基準となるべきものであるから、原判決が前示契約の趣旨を解釈するにあたつて、信義則によつて判断する旨判示したことをもつて、所論のような違法ありとすることはできない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)